老人保健施設で

 

義母から、電話が架かってきた。

【あのねえ。今夜の納涼会にきてくれる】・・・。

「うん・・行くわ、待っててね、6時までにはいくからね」

と受話器を置く。

車で10分足らずのところの施設に入所しているけれど、

毎日行くことができないでいるのです。

申し訳ないなあと思うのだけれど・・・。

 

2Fのホールへ行くと、入所している人たちが、

車椅子に、ホールの椅子に

それぞれ腰をおろしていた。

半分の顔がニコニコ。半分の顔はボーーットして。

寮母さんたちが、かいがいしく動き回っていて、

優しい語り口で、

高齢者の方たちに話し掛けていた。

「ここでいいかな」「お尻痛くない」

「もうじき始まるからね。」「楽しもうね今夜は」・・・。

家族は数家族きているだけ・・・。

 

義母が隅のほうから手を振って、手招いている。

嬉しそうにニコニコとして・・・。

義母の傍へ行くと「YUKIOは」と聴かれたけれど、

「今日はね、お留守番、暗くて歩くの危ないから一緒にこなかったわ」

そういうと。なんか寂しそうな顔で下を向いてしまった。

隣に座ったおばあさんが「娘さんかい」・・・・

と声をかけてきた。

私が「わたし・・」と言いかけると義母は「

家の嫁さんだよ」といって、嬉しそうに応えていた。

そのおばあさんの口から。

「家は来てくれないよ、、来る気があればこられるのにねえ」・・・。

返事に窮してしまったけれど、

「イロイロイロイロ用事がありますよ」と言ってしまった。

「そうだよね、そうなんだけどさあ、なんかねえ」。

私は、黙るしかなかった、

ホールには大太鼓が置いてあって、

太鼓の演奏???が始まるらしい。

 

一通りの挨拶のあと・・・太鼓が鳴り響いた。

【あっあのうち方は・・八丈太鼓だ」・・・。

上拍子・下拍子で向かい合って打つ。

なんとなく勇壮なのに物悲しい。

あの八丈太鼓だった。2年前の八丈島の

青い海が目の底に漂い始めた。

【あぁ、あの時の、青い太陽に、もう一度会いたい】

などと感慨に耽っていたら、

家族がこないと嘆いていたおばあさんが、

部屋へ帰るとホールを出て行ってしまった。

家族のきた人。家族のこなかった人。

それぞれの思いがホールに渦巻いているのを感じた。

 

キテヨカッタ・・・これは自己満足なのかなあ。

2001.8.13