生と死と

 

たいそうな だいめいになってしまったけれど、 

どうってことないことないの。

私の持って生まれた 内部のものが 

捕まえてしまったことなのね。

20時過ぎに一本の電話が入った。

「こんばんは・・Kさんの所のおばあちゃんが、

さっき亡くなったので、

これからお組合で行くことになったので、家へ来てください」

班長さんの Iさんからだった。

「あっそう・・・・ですか・・・。すぐに伺います」 

早くに休もうとしていた 私の体は、

妙にシャキッとして、引き締まって・・・・。

お風呂上りの濡れた髪を 

急いで ガーゴガーゴ乾かして。

体を温かく包んで、冷たい風の吹く中へ 

身を縮めるように歩き出したのです。

Iさんの所へ行くと

「ちょっとお茶でも呑んでいてね、孫の顔でも見ていって」

娘さんが 先日お産をして帰ってきているのでした。

広い部屋に小さな小さな赤ちゃんが 

大の字になって、軽く手を握って。

万歳の格好をしてスヤスヤと眠っていた。

小さいけれど、しっかりと自分をアピールして・・・・・。

近づくとお乳の臭いがプンとしてね 

長いまつげが、ピクピクピクピクって動いていたの。

思わずほっぺたに そぉーーっと 触れてしまった・・・・・

遠い日の感触だった。

柔らかくて あったかくてね 

頬ずりしたくなってしまった。

これから・・何十年生きていくのだろう。

どんな光景の中を生きていくのだろうって思ったの。

そしてね。

亡くなったと言う Kさんのお家へ行きました。

8畳の部屋におばあさんは穏やかな顔をして 

冷たい体で横たわっていた。

おばあさんは Y子さんといって、

穏やかな物静かな方でね

何処か私の母に面差しが似ている人。

だから 大好きだった人。

そのY子さんが80年の生涯を閉じて 

今 少しも動かずに横たわっていたの。

生前のままの姿を目前にしているのに 

問い掛けることも 何も出来ないのです。

当たり前のことなのだけれど、

Y子さんとの間の無限の隔たりを感じて 

切なくなってしまったのです。

そして、少し前にあった 

あかちゃんの あのぬくもりを 思い出して・・・・・。、

生きていく命と、

為すべきことをすべてなし終えた命・・・を思ったのです。

私達の生活の場を去ったY子さん。 

私達の生活の場に登場したあの赤ちゃん。

生まれ来た命と 去った命を同時に目の当たりにして、

生あるものはいつかは必ず滅して 

人の世は常に変わり行くのだということを

深く深く感じた夜でした。

2001.11.17