前髪で・・・思い出した

 

前髪をきる時は、中央に寄せて揃え、

少しはみ出た部分を切るといいのだと、新聞に載っていた。

そうなんだ・・こうやって切れば、ジクザグにならずにすむのね・・

少し、前髪が伸びて気になっていたものだから、

フムフムフンフンと読んでいるうちに・・・・。

急に、何十年も前の光景がありありと浮かんできたの

そう・・・あれは、まあちやが、まだ、小さな7歳くらいの頃のこと。

ある日、父が言いました。

「髪の毛伸びたなあ、よっし、まあちゃの頭の毛を父ちゃんが切ってやる」

私は、古いシーツに包まれて、縁台の上に載せたイスに座らされた。

私の耳元で、父が野太い声で、・・。

「動くなよ、動くと耳がちょん切れるからな」などと脅すものだから、

私は、縮こまってイスに座っていたのね。

確か、耳の下3センチくらいはあったオカッパの髪の毛が、

チョキン、チョキ、チョキ、チョキチョキという音ともに、

白いシーツの上にバラリパラパラ落ちていくのを私は、じっと見ていたの。

そして・・・父が言いました。

「ヨシッ・・横は・・これでヨシッ・・」 何がヨシなのか、

ヨシというのは私のセリフだろうになあと想いながらも、

耳が落とされてはと、じっとじっと大人しくしていたのよ。

なのに・・父は

「うん!! チョット曲がったかな?? こっちの方がまだ長いな」などと言いながら

私の前髪を、チョキチョキ何回も何回も切るのです。

だんだん不安になってしまった私は、

「もうおわるう」

父は

「まだまだおとなしくしてろ」

なんか、ハサミの感触が広いオデコの上のほうにあるのね。

私は、前髪がなくなってしまうのではないかと思い、

だんだん悲しくなってきてしまって、そしたら、下唇がだんだん突き出てきて、

私の顔はベソかきの顔になってきてしまった。

「あれっ、まあ、まあ、父ちゃんは、」という母の声。

その声でも私は全てを理解してしまった。

私の前髪がなくなっちゃったと想って、ベソかきの顔から、

本格的に「わあ〜ん」と泣き出した。

「泣くな、泣くな、髪の毛なんか。すぐ伸びるぞ」と父。

「ああ。いい子になったなった、チョット短めだけど」と母。

「ホントウニ」と私。

けれど、鏡の中の前髪は・・・・・・・。ホンノスコシアリマシタ。

何年経っても、何十年経っても、この日のことは

ハッキリと覚えているのです。

今頃、父は、あちらの世界で、クシャミしているかもしれませんね。

2002.03.30