トンネル

 

カタクリに逢いたくて、国道299を走った。

山が、薄緑色に色づきはじめているのを観ると

いつも想う。

「ああ。山が動き出したなあ」と、

ムクムクと頭をもたげるように、木々が動き出す。

鋭く、天を指していた小枝の先が、柔らかくなり始めると

【山が動き出した】そう想う。

そんな中をひたすら走る。

 

カタクリに逢うためには左折するのに

知らぬ間に、私は、通り過ぎてしまった。

このまま・・走ろう。

何処までも走ろう

そうだ・・秩父まで行ってしまおう。

芝桜に逢おうか・・・そうしよう・・。

 

目の前に、あの厄介なトンネルが現れた。

2キロ弱のトンネル・・・いつも、ここは怖い。

でも慣れた・・慣れたはず。

ライトを付けて、突入した。

突然の暗さに・・・【あっいやだ】

そう想った瞬間、両壁が押し寄せてくるようで、

息が詰まりそうになった。

呼吸が苦しい、心臓が鷲づかみされたように

ドクドクし始めた。

前を走っているダンプの赤いライトが見る見る遠ざかっていく。

早く早く早く・・・此処をでたい。

車線を区切る、短い杭がやけに目に付いて・・・

杭はヒュンヒュン後ろへ飛んでいく。

 

前方に明るさが見えた・・ああ出口が近い・・・。

ああ〜でたあ〜・・肩の力がスウーーット抜けていくよう。

 

秩父の羊山公園には、桜吹雪が舞い。

広い広い斜面には、ピンクや白の芝桜が

一面に咲き乱れ、甘い香りが鼻腔を掠めていった。

 

四月にしては、暑すぎる陽射しの中で、

人々は上着を脱ぎ、汗を拭きながら芝桜を眺めている。

私は、ファインダーを覗くのも忘れて、木陰から、

一面の芝桜をぼんやりと眺めながら・・・・。

帰りは、峠を越えよう・・トンネルはイャだ。

 

そして・・・帰路・・・

トンネルの手前を右折し・・幾つもの、幾つものカーブを切る。

すごい急坂、でも、トンネルよりずっといい。

 

閉所恐怖症の私は、トンネルが大の苦手なのです。

 

2002.04.02