貼り紙

 

数人で、街中をグルグルと歩き回った時のこと。

普段、車で通っている道を、たまに歩くと、

いろいろな変化に出くわしますね。

 

一軒のお店のシャッターに貼り紙がしてあったのです。

足を止めて、張り紙を見ると。

 

永い間、

ご愛顧賜り

誠にありがとうございました。

故あって、ここで

閉店とさせていただきます

 

と達筆な文字で書いてあった。

たった五行の肉筆から、

主の想いがヒシッと伝わったのです。

故あって・・・の文字が、何故かとても気になった。

跡継ぎが居ないのか、

経営が成り立たなくなったのか、

具合が悪くなったのか

 

もう、何十年も営んできた薬局。

薬局というより、

まあちゃにとっては「くすりやさん」。

そんなイメージのお店だったのです。

 

子供のころ

「あのね。肩が痛いって母ちゃんが言ってるの」なんて言うと

髭のおじさんが・・

「ハイ、とくほん」と言って差し出してくれたっけ。

大人になっても、

あのね。あのね・・・と言いながら、薬を買ったなあ、

いつだったか、「今夜は飲めないお酒を飲むのよ」といったら。

この胃腸薬を20錠飲んでから、

お酒飲むといいよ・・って言った。

おかげで、悪酔いしなかったっけっな。

貼り紙を見ながら、

いろいろな思いが心を掠めていったのです。

小さなときから知っている思い出のお店が消えていく・・

 

そして・・もう一軒・・同じように貼り紙があった。

閉店・・・の貼り紙。

こんなに、暑いのに、心の中にヒュンと一瞬

冷たい風が、通りすぎていったのです。

 

 

2002.0727