鳴き声

 

Kさんの家の野辺の送りの日は、

風の強い日で、空は何処までも蒼かった。

こんなに、空って、蒼かったのか・・・と

まあちゃはテントの中から、

空を見上げていたのです。

まるで、海のよう !!

強い風は、色づき始めた楓の葉や銀杏の葉を

空へ舞い上げていたわ。

11時半を過ぎると、黒い装いの影がチラホラ見え始め、

受付のテントのところへと歩み寄ってきた。

お香典を受け取りながら・・・ふと思ったのです。

【そういえば、ゴロウは昨夜から鳴いていないな】

Kさんの家のゴロウは、人が通ると鳴く犬だったのですね。

あまりの人の多さに、恐れをなしたのか・・

ゴロウは、ワンとも言わないのよ。

 

風は、ますます強くなり

庭と畑との境に立てられた花輪を

ガタガタ、ユサユサ揺すり

髪が頬を、パラパラと

かきなでていく・・・・。

風がなすままに読経に聴き入っている

僧侶の声が、風に乗り、

Kさんが耕していた、畑の上を通り過ぎていっても、

ゴロウは、共鳴することもなく、

静かに小屋の中で、蹲っていたのね。

 

そして、13時30分に出棺。

霊柩車がのホーンが

短く、そして 長く 二回 響き渡り

Kさんの遺体が、自宅を離れて行った時も、

ゴロウは、小屋から出るでもなく、

前足の上に顎を乗せて、じっとしていた。

 

焼香に訪れた人々も、帰路に着き、

閑散とした、部屋の中で、受付をした方たちと、

香典の整理をしていたら、

突然、ゴロウが、けたたましく鳴き始めたのです。

ウオン ウオン ワンワン・・ワンワンワンワン・・・って。

外を見たら、誰もいないのに、鼻先を空へ向けて。。

ゴロウは鳴いていました。

10分近くも鳴き続けていたみたいだったわ・・

ふと、時計を見たら、

14時15分。

Kさんが、火葬に付されている時間だったのですね。

一瞬・・ゾクッとした。

ゴロウが、最後のお別れに鳴いている。

そう思った。

ワンワンワンと・・ゴロウは鳴き続けていました。

最後の最後にゴロウはKさんに

「サヨナラ」したのだろうね。

 

2002.11.16