桜吹雪

午後、川沿いの道を西へ西へと車を走らせた。

もっこリ膨れ上がった桜の花々が、少しの風に煽られ

枝を揺らし、フロントガラスに雪のように舞い降りてきた。

一瞬、雪の中を走行しているような、

そんな感覚にとらわれてしまったのね。

そして、

遠い遠い雪の日の別れが突然生々しく

浮かび上がってきたの。

濡れた髪の感触や、かじかんだ手・・・

でも、一瞬よ!! チョットだけ思い出したの。。

隣に座っている夫の左手さんは、そんなまあちゃの

心中なんて、知る由もない。。。(#^.^#)

誰だって、そんなことあるよね。

目の前を、よぎる一瞬の光景に何の脈絡もなく、

普段は記憶の奥深くに押し込まれている光景が

鮮やかによみがえってくる事って・・・。ねっ、あるよね。

今、あの人・・・・禿げてしまったかなあ・・

なんて、想ってしまったわ。

だってね、髪の毛薄かったもの・・・。

 

西へ車を走らせたのは、

忙しくて、なかなかいけなかった、義母のハルちゃんの

施設へ行くためだったわ。

四階のハルちゃんの部屋に入ったら、薄暗い中で、

ガーガーっていびきをかいて寝てるのよ。

ハルちゃんハルちゃん。。呼んでも、起きないのね。

だから「おハルさん」って呼んだら、、「はあ〜はいはい」って、

目を開けたわ。

「「あらあ〜来てくれたのう」とニコニコ顔。

そして、ハルちゃんを連れ出して、

三人で施設の近くのお店に行ったのね。

眼下を流れる川沿いの桜が

曇った空の中に薄桃色に浮かび上がっていたわ。

ハルちゃんが、遠い目をしてポツリ言った。

村は、山が全部桜だった・・・・・。

「風が吹くと、一瞬前が見えなくなって・・・まるで吹雪だったよ」

散り行く桜を見ながら

ハルちゃんは、遠い少女の日へ一瞬・・・還ったのだろうね。

 

2003.4.14