特攻花

 

 

ただ、ただ、素直な気持ちで、

「逢いにきました」そう言って、

知覧を訪れたい・・・

そう言葉に出して、わたしは、知覧へ行きました。

 

知覧にはジリジリとした真夏の太陽が照り付けていた。

ずっと並んだ石灯籠の道を歩き、ふと見た、ガラスケースの中に

神風特攻隊の彼らの笑顔があった。みんなみんな笑っていた。

何故、笑えるのだろう。何故、笑っているのだろう。

飛行機ごと敵艦に体当たりするという避けられない死の任務を

背負い、死地に赴くというのに・・・笑っている。

一人飛び立つのに、笑える強靭さはどこから

生まれてきたのだろう。

その笑顔と高校野球の球児の笑顔がだぶった。

同じ若者の笑顔なのに、死に逝く笑顔と勝利の笑顔。

かけ離れた存在なのに同じ笑顔だった。

特攻隊の若者の笑顔は、鋭く、すばやく、

わたしの心の中に食い込んできた。

けれど、本当にこんなふうに笑っていたのだろうか。

死の恐怖を笑いでごまかし、強がっていたのじゃないのだろうか。

死の恐怖に直面して、気の狂わんばかりの人もいたのだろうに。

あの、最後の夜を過ごした三角兵舎の薄い布団の中で、

本当は泣いていたはず・・・。

そう、想う。

 

特攻平和会館は多くの人でごった返していた。

ざわめきは一つもなくて、ハンカチを顔に当てている人が

そこかしこにいた・・70代後半と想われる男性がメガネをはずして

涙を拭いていた・・・生きていれば、あのくらいの年なのだろう。

1028人の遺影。遺書。遺品が展示されている。

達筆な文字で、母へ綴った遺書があった。

読み勧めるうちに、文字が見えなくなってきたけれど、

「逢いにきました」「読ませていただきました」そう呟いた。

 

雨・吹き渡る風・蝉の声や草のにおい、吸い込まれそうな空。

彼らが、最後に五感を通して感じた世界に足を踏み入れたけれど、

それらは、58年前と同じだ・・・そう想うのです。

そらはどこまでも青く、

こんな空の中を南へ飛んでいったのだなと。。

何時までも、空を仰いでいたのです。

目を落とすと。。。そこかしこに、

知覧で「特攻花」と呼ばれる

オレンジ色の花が咲き乱れていました。

 

2003.08.30