墓地

 

山の斜面の墓地へ向かう

鎌、大きな草刈バサミを抱えて

緩やかな傾斜をあえぎあえぎ登っていく

しんどいなあ・・・・心臓の鼓動が激しく波立って、

ドッキンドッキンと全身に鼓動を撒き散らしている

はあはあ言いながら、

草いきれのムットするなか、歩を進めると、

向こうの斜面にも、麦藁帽子がヒョコヒョコと

動いているのが見えた。

この道と あの道が ぶつかった時、

【暑いですねえ〜おはようございます】と

挨拶が交わされるのだろうな、

なんか、そんな挨拶さえ面倒に思われてしまう。

少し ゆっくりと 歩いて行こう。

だって、あまりの暑さに、

アタシの言の葉は枯れてしまっているからさ。

無住職のお寺の墓地は、自らが手入れをしなければ、

無縁仏の墓のように草に覆われ、荒れ果ててしまう。

案の定、ものすごい有様になっていた。

「ご先祖様ゴメンナサイ」と・・・とひと言謝罪し、

強い日差しの中

黙々と草を抜く、ひたすら抜く、しりもちつきながら

ヨイショと自然に掛け声を上げているアタシ。

首筋を 背中を 頭を 額を 全身に 

汗が流れ落ちている。

ふと、暑さの中に 

ヒヤリとした 一陣の風か 吹きぬけた・・・・。

「あっ」

見上げると、

杉の緑と 青い空と 白い雲の なんでもない光景が

アタシを見下ろしている。

「なに? 今の風は」

風は止んだのに・・・・。

卒塔婆が 「カタッ」と動いた。

容赦なく照りつける太陽の下 

ふわりと何かが通り抜け、妖気がが漂った。

 

墓場は使者の溜まり場と誰か言っていたけど

あまりの暑さに死者の霊も地中から

這い上がったということか、

いゃ・・・。

立ち上ぼる熱気がアタシの感覚を狂わせ、

支配したのかも知れない。

 

最後に水を打ち、清清しくなった墓前で

【終わりました】と手を合わせる。

涼やかな風がアタシの汗まみれの体を

通り抜けていった。

 

「お手手とお手手を合わせると・・・シアワセ・・・」

コマーシャルの女の子の姿が

ふと・・・・浮んで消えた。

 

2004.08.09