悲報

 

血圧の薬がなくなりそうだったから、

市内の掛かりつけの 髭先生のところへ行ったら、

入り口のドアに

「一身上の都合で当分の間休診します」と書かれていた。

ガラス扉向こう側には、いつもなら多くの方が

腰掛けているのに、誰も居になくて

し〜んと静まり返っていた。

どうしたのかな?

そこへ、看護士さんがきて、目を潤ませながら

「先生が昨日の朝亡くなって」

「えっそんな・・だって」

後の言葉が出てこなかった。

「なんで」と聞いても看護士さんは答えないだろう。

お薬は、医療ビルの四階の皮膚科の先生が

処方してくれるとのことだった。

髭先生は、55歳。若すぎる急逝に

しばし呆然としてしまった。

 

受診すると、たわいもない会話をしてくれて、

義母のこと、yukioのこと、色々と聞いてくれた。

そんな先生だから、一人の受診時間は

とても長い、でも誰も文句を言う人はいなかった。

優しい先生だった。

お年寄りには特に優しくて、モテモテだった。

一人のオジイサンが

「これからどうすりゃいいんだ」とつぶやいていた。

そうよ、今まで、安心して身を任せていた医者が

急にいなくなった。

戸惑ってしまうのは当然だろう、

お医者を探すのだって大変なこと。

医大での検査の結果を髭先生に

報告するはずだったのに、

もう其の必要もなくなってしまった。

ガラス扉の向こうの待合室の

誰も座っていない椅子を見ていたら、

目の奥が熱くなってきた。

人の死は本当にに突然訪れる。

もう

あの温かな眼差しに逢うことはない。

 

2005.06.22