迎え火

 

陽が落ちはじめ、、

空が青から薄紅に、そしてラベンダー色に変わる頃。

玄関の前で、門火を焚く、これが迎え火。

オガラを丁寧に小さなお皿の上で、

井桁状に積み上げ

そっと、下から火を点ける。

火はゆっくりと燃え上がり、

夕闇の中で、

チロチロと赤く燃え広がった。

ラベンダー色の空の下で、

赤い小さな炎をみつめていると、

異界へ引き込まれそうな気分になってくる。

こんな、小さな灯りをみつけて、先祖の魂が還ってくる。

空を仰ぐと、小さな風が頬を撫ぜた。

「遅かったじゃないか」・・・・・。

そんな先祖の声が聞こえたみたいだ。

こんなふうに、

何時の日かは、ワタシの霊魂も迎えられるのだろうな。

オガラの火が消え入りそうになったときに、

ロウソクに火を灯し、提灯に入れ、

玄関の階段をゆっくりと上がり、

仏壇へと先祖の霊をそっと導いていく。

義母は来ているのだろうか、

〈死んでからは、世話にならない〉と言い、

遠いお墓へ葬られた義母。

信仰上のこととはいえ、30数年間、居をともにし、

喧嘩し、笑い,泣き、苦楽をともにしたのに、

死して、全て、ワタシの手元から消えていった。

先祖代々の墓地には、義母のお骨はないけれど、

仏壇にも、義母の崇拝した、「ご本尊」はないけれど

きっと、還ってきている。

だって、ここに住んでいたのだもの。

「ハルちゃん」と呼びかけてみる。

写真の中で

義母が笑った。

確かに笑った、

還っきたんだね。

 

2006.08.13